不動産登記簿は不動産の権利関係について、一目で把握することができます。
近年では「登記情報提供サービス」のようにオンラインで情報の閲覧、取得も手軽にできるようになりました。
さて、本記事では不動産登記簿(登記事項証明書)の基本的な読み方・見方について解説していきます。
・不動産登記とはどのような制度か
不動産登記とは、土地や建物に関する不動産の物理的現況と権利関係を公示することで、安全な不動産取引を実行するための制度です。
※不動産登記簿の正式名称は「登記事項証明書」です。一般的には不動産登記簿とよぶことが多いですが、不動産登記簿も登記事項証明書も実質的には同一のものを指します。
・不動産登記簿の取得について
不動産登記簿を取得するためには、主に下記3つの方法があります。
- 法務局で取得する
- オンラインで申請し、法務局で取得する
- オンラインで申請し、郵送で取得する
・不動産登記簿謄本の読み方
不動産登記簿謄本は以下3つから構成されています。
- 表題部
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
- 表題部
一筆の土地・一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、不動産を特定するために必要となる情報が記載されている部分を指します。
※土地登記簿において、一個の土地を指す単位を「筆」と呼びます。
<土地の場合>
「所在」
「地番」土地登記簿の表題部に記載されている、この土地に付された番号
「地目」登記所の登記官が決定した、この土地の主な種類・用途のこと
地目の種類には主に下記の23項目に限定される。
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、
墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、
堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地
「地積」この土地の大きさ・面積
「原因」
「所有者」
<建物の場合>
「所在」
「家屋番号」この建物に付された番号(一棟につき一つ付されます)
「種類」
「床面積」
「原因」
「所有者」
さらに付属建物についても同様の内容が記載されます。
・不動産登記簿謄本 権利部(甲区)、(乙区)について
権利部(甲区)には、この不動産の所有者はだれなのか、という情報が記載されています。
権利部(乙区)には、所有者以外の権利に関する情報が記載されています。
所有者以外の権利としては、「抵当権」、「根抵当権」「賃借権」「地上権」等があります。
・所有権登記について
- 所有権保存登記
所有権保存登記とは、表題部の登記はありますが、所有権に関する登記がされていない不動産について、最初になされる所有権登記のことを指します。
例えば表題部所有者のAが、所有権保存登記をしないまま亡くなった場合、Aの相続人であるBは、Bを所有権者とする所有権保存登記をすることができます。
・所有権移転登記について
所有権移転登記とは、土地や建物を購入したときに、その所有権が売主から自分(買主)に移ったことを明確にするために行う登記です。所有権が移転する原因としては以下のものがあります。
- 相続
被相続人が不動産を所有していた場合、その不動産の所有権は相続人が取得することになります。その権利取得を登記簿に反映するのが「相続登記」です
相続登記に期限はありませんが、相続登記をしないまま何十年も放置した場合、相続人が多数になり、相続登記が困難になります。相続登記は相続開始後3か月以内に申請すると良いでしょう。
<相続登記の流れ>
- 相続人を確定する
戸籍謄本等を取得し、相続人を調査・確定する。
- 遺産分割協議を行う
名義人であった方が遺言書を残していなかった場合は、遺産分割協議により土地・建物を誰がどの財産を取得するかを決めます。遺産分割協議は相続人全員の同意が絶対条件となります。誰か一人でも遺産分割案に反対すれば成立しません。
- 遺産分割協議に基づいて、相続登記を申請する。
相続人確定のための戸籍謄本一式と、相続人全員の同意によって整った遺産分割協議書類、そのほかの必要書類を添付し法務局へ不動産登記申請を行います。
- 売買
- 贈与
・区分所有建物の登記
区分所有とは、分譲マンションのように、建物が独立した各部分から構成されているとき、その建物の独立した各部分を所有することをさします。
土地と建物は別々の不動産ですが、分譲マンションなどの区分所有建物は、建物と敷地が一体のものとして取り扱われるため注意が必要です。
マンションの敷地は複数の区分所有者の共有であって、単独で所有しているわけではありません。ですから、マンションの権利は単独での建物専有部分の所有権と、敷地所有権の共有持ち分で一体化されます。
・根抵当権
根抵当権とは、継続的取引などによって生じる不特定の債権についてあらかじめ定めた金額を上限として担保する抵当権のことをいいます。担保する債権が特定されないことが特徴です。
根抵当権は設定が最初の1回だけで済む分、設定登記費用も節約することができます。
・借地権について
借地権とは、住宅などの建物を建てるために地代を払って土地を借りる権利のことです。 そのため、建物がない駐車場や資材置き場などは含まれません。
一般的に借地権には「地上権」と「賃借権」」があります。
■賃借権 登記義務の有無…なし
権利譲渡の対する底地所有者の承諾…必要
権利に対する抵当権設定の可否…できない
■地上権 登記義務の有無…あり
権利譲渡の対する底地所有者の承諾…不要
権利に対する抵当権設定の可否…できる
一般的に、賃借権に基づく借地権の登記は義務ではありませんが、登記するメリットもあります。
例えば定期借地権の場合、契約が終了すると借主は建物を解体し、更地に解体する義務があります。しかし長期的に借りていた場合、数十年前に交わした契約書等の保存がなされていない場合、土地の返還請求が非常に困難になる場合があります。
上記のような場合であっても、定期借地権を登記しておくことで賃借権終了の主張がしやすくなります。
不動産登記簿は士業や法人だけにとどまらず、個人においても影響のある重要な証明書であることが言えます。
上記で説明した基本的な読み方をしっかりと確認し、有効活用していきましょう。