取締役の義務と責任について
近年、上場会社において様々なコンプライアンスにおける問題がメディア等で取り上げられていますが、このコンプライアンスの問題は上場企業だけではなく中小企業においてもただしい会社法の認識と注意が必要です。そこで、中小企業の役員がどのような責任や義務を負っているのか、どのように位置づけられているのか、下記に紹介していきます。
■取締役と取締役会はどのような役割を担っているのか。
株式会社で業務に関する様々な意思決定を行うのが取締役や取締役会です。
株式会社には取締役を一名、少なくとも置かなくてはなりませんが取締役3名以上で構成される取締役会を設置するか否かは任意とされています。
取締役会を設置していない会社では、株主総会は会社に関する事項一切を決定することができますが、取締役会設置会社では、株主総会は会社法又は定款で定めた事項に限り、決議することができます。つまり、取締役会を設置するかによって会社の意思決定権限が異なることになります。
取締役会を設置していない会社では、各取締役が会社の業務を執行します。取締役が一名の場合は単独で行執行をすることができますし、複数名であれば取締役の過半数で業務を決定することができます。
取締役会設置会社では、取締役会が業務執行の決定を行い、代表取締役や取締役会で取締役として選定された取締役が業務執行を行います。会社法上、下記の一定の重要事項については取締役会で決定しなければなりません。
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 多額の借財
- 重要な財産の処分及び譲受
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 内部統制システムの整備
- 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
- 取締役の会社に対する損害賠償責任の免除
- その他の重要な業務執行
■善管注意義務・忠実義務
取締役は善管注意義務と忠実義務を負います。取締役と会社は委任の関係にあり、民法の委任の規定に元基づいて、取締役は委任者である会社に対して善良な管理者としての注意義務を負います。
※善良な管理者としての注意義務とは
民法644条には「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と定められています。
また、取締役は法令及び定款並びに株主総会の決議を順守し。会社のために忠実に職務を行わなければならないとされています。これを忠実義務といいます。会社法だけではなく会社の事業に関する法令を遵守する必要があります。
■代表取締役社長は自由に取締役の報酬を決めることができるのか
取締役の報酬や賞与・その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益については、定款で定めるか株主総会の決議によって定めなくてはなりません。つまり、代表取締役社長や取締役会が自由に取締役の報酬を決定することはできません。
■監査役の役割
取締役会設置会社は監査役を置かなくてはなりません。監査役は取締役の職務執行の適法性を監査するとともに、監査報告の作成を義務付けられています。取締役会も同様に取締役の職務執行の監督を行いますが、適法性の監査以外に業務執行の妥当性の監査も行います。
監査役は当該会社及び当該会社の子会社の業務及び財産を調査する権限を有しています。
取締役会の出席も義務付けられており、取締役の不正行為や違法行為等がみとめられた際には鳥心理役会に報告しなければなりません。
監査役と会社も委任契約の関係にあり、会社に対する善管注意義務を負っているため、適切な監査及び権限行使を怠った場合には、善管注意義務違反になる可能性があります。
■取締役の監督義務
取締役会を構成する取締役は、他の取締役の業務執行についての監視・監督する義務を負うとされています。また、代表取締役だけではなく、代表権を持たない他の取締役の監視・監督義務も課せられると一般に考えられています。
■取締役の解任について
株主総会の普通決議によって、取締役はいつでもどのような理由であっても解任することが可能です。解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除いて、解任によって生じた損害の賠償を会社に請求することができます。取締役の中で序列を設けていた場合でも、取締役としての監視・監督義務が軽減されることにはならないので注意しましょう。